生活習慣病予防には減量

肥満、糖尿病、高脂血症、高血圧症などは私達の食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒習慣などの日常習慣がその発症、進行に関与する症候群として、『生活習慣病』と言われてます。

生活習慣病の予防および治療で最も基本になることは体重のコントロール(減量)です。

減量に必要なものは食事量のコントロールと適度な運動なのですが、この10年間のデータを見ますと、日本人の食事による摂取エネルギーは横這いで極端な増加傾向がないことが分かりました。

それにもかかわらず、生活習慣病の人が増えているということは、現代人における問題は運動不足にあると考えられます。

肥満の定義

肥満の判定は身長と体重によって計算されるBMI(Body Mass Index)という数字で示されます。

BMI=体重(kg)/身長(m)/身長(m)

この数字で18.5~25までを普通体重とし、一般的にはBMI22を標準体重、BMI25以上を肥満と定義しています。

BMI

低体重(やせ)/ 18,5未満

普通体重 / 18,5以上25未満

肥満(1度)/ 25以上30未満

肥満(2度)/ 30以上35未満

肥満(3度)/ 35以上40未満

肥満(4度)/ 40以上

食事のコントロール

一日の総摂取適正エネルギーは以下の式で計算できます。

ご自分の身長で計算してみてください。

適正エネルギー摂取量(kcal)=標準体重【身長(m)×身長(m)×22)】×25~30(重労働者は35)

もちろんカロリーだけではなく、バランスも大切です。日本人は米や麺といった炭水化物を過剰に摂りますので、注意が必要です。炭水化物はエネルギー全体の60%を目安にしてください。

運動による消費カロリー

運動をした直後に体重計に乗って1kg減ったと喜んでも、次の日に量ると元に戻っていたという経験をされた方は多いと思います。

実は運動による消費カロリーだけで体重を減らすのはとても大変なことなのです。

脂肪1gは7kcalに相当しますので、脂肪を1kg(1000g)消費するためには7000kcalの運動が必要になります。7000kcalの運動とはどれぐらいの運動量でしょうか。

ウォーキングでは女性(体重50kg)で35時間、男性(体重70kg)で24時間の運動量となります。

つまり、運動による消費カロリーだけで体重1kgを減らすということは1日では不可能ということがお分かりだと思います。

脂肪を燃やすための有酸素運動

1kgの脂肪を減らすための運動量は上に述べたように絶望的な数字ではありますが、何日も、また数ヶ月に分割して消費しても効果は同じですので、諦めずに継続して行うことが大切です。

脂肪を燃やすためにはたくさんの酸素が必要となるので、有酸素運動が有効となります。

有酸素運動で覚えていただきたいことはそのエネルギー代謝の仕組みです。

有酸素運動の初期では筋肉内に蓄えられているエネルギーが消費されます。この筋肉内のエネルギーは人により異なりますが、約15分で枯渇し、その後脂肪の燃焼が始まります。つまり、有酸素運動を始めて15分以降の時間が脂肪が燃焼される時間となるのです。

生活習慣病の運動療法が『低負荷の有酸素運動を一回30分以上』と推奨されるのは30分以上の有酸素運動をしなければ十分な脂肪が燃焼されないこと、低負荷でないと30分以上継続できないという二つの理由によるものなのです。

基礎代謝を上げる筋肉運動

運動療法にはその消費カロリーだけではなく、筋肉量を増やし基礎代謝を上げるという効果もあります。

基礎代謝とは呼吸、心臓などの臓器を動かすという生きていくために最小限必要なエネルギーのことです。筋肉組織は非常に燃費の悪い組織で、その維持には多くのエネルギーを必要とするため、筋肉質の人は基礎代謝が高く、太りにくいからだとなります。

筋肉の量を増やし、基礎代謝の高いからだ(脂肪の燃焼しやすいからだ)を作るためには有酸素運動だけではなく、多少負荷が大きい筋肉運動も必要となるのです。

運動療法の実際

以上のことより、減量のためには脂肪を燃やす有酸素運動と、筋肉を付けて基礎代謝を上げる筋肉運動が必要であることがお分かりいただけたと思います。

しかし、運動療法を行うときに最も大切なことは安全性です。

特に、筋肉運動は有酸素運動に比べ心負荷が大きいため、十分注意して行う必要があります。

糖尿病、高脂血症等の基礎疾患、合併症の有無、年齢によりどのような運動を、どれぐらい行うかという運動プログラムはお薬の処方箋と同じように一人一人に合わせて作成されるべきであると考えます。

また、お薬が病状によって変わるように、運動内容も定期的なメディカルチェックを行い、状態により変えていく必要があります。

効果的で安全な運動処方箋を作成するも病気に対する医学(メディカル)と運動(フィットネス)の知識を兼ね備えたスポーツドクターの大切な使命であり、こうして行われる運動こそが真のメディカルフィットネスであると考えております。

当院では皆様方一人一人の状態に合わせた正しい運動療法を提供いたします。

生活習慣病が気になる方はお気軽にご相談下さい。